赤い相撲〜愛のどすこい伝説〜
コンパイル ディスクステーション PC98
○前書き
相撲ゲームと聞くと、『ああ播磨灘』を思い浮かべるクソゲー大好きな皆様、いかがお過ごしでしょうか?
と、まあ固い挨拶はこのくらいにして、さっさと本題に入ることにします。このゲームは、相撲を題材にした
ゲームの中で、おそらく唯一と思われるコマンド選択式ADVゲームとして、脳味噌コネコネ・コンパイル
より10年以上前に発売された、華のあるPCゲームです。
男らしく相撲などをテーマに敷いているワリには、アクション要素が皆無という全く男らしくない
相撲ゲームなのですが、それもそのはず、主人公は女性です。もちろんライバルも女性です。
そのような無茶な設定を生かした世界観で、真面目なシナリオが展開されるはずはありません。
相撲ゲームなのにジャンルがADV、主人公が女性、しかもバカシナリオという、
相撲ゲーム史上最果てにひっそりとも、燦然と輝くであろう、ブッ飛びゲーム。
それが「赤い相撲〜愛のどすこい伝説〜」なのです。
○新たなる相撲伝説
ゲームを起動すると、いきなり「日本の相撲の歴史」が流れ出し、黒地に白文字でプレイヤーに訴えかけてきます。
「・・・そして1998年、新たなる相撲伝説が語られようとしている。」←ラストメッセージ
まさかスタッフも当時未来予想図を描いていた1998年どころか、
21世紀に入ってからこんなところでレビューされようとは思ってもみなかったでしょう。
メッセージが消えるとタイトル画面へ。歯切れの良いサウンドが聞こえ、青い力士が向かい合っているグラフィックを
バックに、巨大な赤文字で「赤い相撲」と迫力満点の演出。筆者も初プレイ時、
ここまでは非常に期待を寄せていたのです。しかし、スペースキーを叩いて実際にゲームを開始すると、
そこに映っていたのは学校の前でブレザーを着たア○ル似の女の子のグラフィックと、
見る・話す・考える・待つ・ぼーっとするという相撲とは全く関係のない不可解な選択肢群でした。
「あれ、どこが相撲ゲームなんだろう?」
そう思ったのですが、ゲームを進めていくウチに、どこがどう相撲なのか身を持って体験することになったのです。
○ブッ飛びシナリオ
主人公・栗尾由美は、相撲の神とまで呼ばれた龍風山の血を受け継ぐちょっとおかしな女の子。
そんな彼女は校門の前でシコを踏み踏み、愛して止まない
刃物のような鋭さを持つ(原文ママ)高橋牙雄クンにラブレターを渡そうとスタンバっています。
恥じらいながらもラブレターを渡し、家へ帰る途中に道に迷いいきなりチカンに襲われるのですが、
持ち前の潜在能力ではたき込み。チカンを撃退します。
ちなみにこのチカン、後の展開でわかるのですが相撲カレッジの校長でして、由美をスカウトしようと
近づいたところ勘違い返り討ちを食らったのです。そして次の日、牙雄クンから返事を頂くのですが
「許してくれ。俺、今つきあっている人はいないし、君はとても美しい。だが、俺の最初の恋人は
相撲をやっている女の子って心に決めているんだ。ごめん。」
と、「そりゃなかなか恋人はできないぞ、牙雄!」と余計で下世話なツッコミを入れたくなるような寝言を
吐いて、自分の経営する相撲アカデミーにスカウトするのですが、すっかり騙されて入学を決意する由美。
実はこの裏には、何と牙雄の父親は力士で、由美の父親に取組中に土俵で殺されたという深い因縁が・・・。
と、言うように第1話だけでも先が読めるようで全く読めない、夢物語な仕上がりで大混乱。
ちなみに全3話なのですが、第2話「嵐のドスコインガーZ」(←タイトルです)では牙雄の妹である、
やけに事細かいツッコミを入れる麗子がライバルとして由美の前に立ちはだかったりするも、
由美を手に入れんとするチカン校長が愛機チャンコウロスというロボに乗り、
部下もいないのかたった1人で相撲アカデミーに攻めてきたりと、
ギリギリの線でストーリーが繋がっていることは繋がっているのですが、プレイヤーが状況を飲みこむ前に
勝手にバンバン進行してしまい、あれよあれよという間に第3話「消えた牙雄」と最終話。
ラストは青春ドラマ風(?)に、
「よぉしっ!明日に向かってすり足だっ!」
と朝日の中、牙雄が由美と麗子に呼びかけると
「どすこいっ!」
と声を合わせて張り手を突き出すというカッコいいのかどうか、筆者にはわかりかねない
クライマックス・グラフィックが表示されたあと、
「相撲。それは、勇気と希望に満ち溢れる冒険。由美、牙雄、麗子、3人の冒険は、
今、始まったばかりだ。行け!どすこい3人組よ!」
と締めくくられてしまいます。ちなみに第1話で、由美の妹が記憶障害という設定が暴露され、
何とかしてあげたいと思う心優しい由美の一面が垣間見られる泣かせるシーンがあります。
2話以降、せっかくの設定は忘れ去られたのか、そのことに関しては全く触れられないまま終わるのですが、
これを設定の消化不良と言います。
○一風変わった選択肢群
選択肢は取り合えず見る・聞く・話す・考えるの4つを軸とするベーシックなものから、
相撲ゲームらしくシコを踏む・すり足・塩をまく、ロボ操縦時にはレバー・ペダルのコマンド、
はたまたナレーションコマンドまで出現して、キャラの暴走にツッコミを入れてくれるなど至れり尽せり。
しかし、必ずしも状況に合わせたコマンドが現れるとは限らず、牙雄クンにラブレターを渡す時などのように、
間違い無く現れてはいけないと思うシコを踏むコマンドが現れたりします。
どこの界隈に告白タイムにシコを踏む女の子がいるのでしょうか。
また、チカンに襲われている最中にもシコを踏むコマンドが現れたのでニヤリとそれを選ぶと
「股を開くのは危険だ。」
と断られたりして、よく考えたら全部小ネタじゃねぇか!
あと、ここでワンポイントレッスン。シコは本来、邪気を払うために行うものです。
○どすこい、どすこい
やっぱり、それでも、何とか相撲ゲームなので、各部に相撲エッセンスを取り入れていますが、
どうもそのエッセンスの加え所を徹底してしまったために、
由美が唱える勇気の出るおまじないが「どすこい、どすこい。」。何、それ?
また、ドスコインガーZに乗って起動させる時のセリフも、
「どすこい装着!」と根底の意味からしてどすこい違いをしていたりと、どすこい1つ取ってもこの有様。
あと筆者の些細な疑問ですが、TVで「どすこい」と叫んでいる力士を見たことがないのですが、
本当に「どすこい」は公式の場で使われているのでしょうか?情報求ム。
○エンディングまで30分足らず
何とこのゲームにはゲームオーバーがありません。その上完全に一本道シナリオのため、第3話までプレイしても
プレイ時間が30分に満たないという超ショートシナリオ。計算すると、1話約10分です。
また、このゲームは定期的に発売されたディスクステーションという雑誌に1話ずつ同梱という形態で発売されたため、
第1話が同梱されたディスクステーションだけでは終わるに終われないという仕様。
次回予告
君のハートにどすこい1発!
次号、第2話「嵐のドスコインガーZ」
ワクワクして待っているでゴワス。
せっかくエンディングまで辿りついたと思ったら、あと続けて2号買わないと真のエンディングを見ることは叶いません。
・・・人の性として、次号も購入せざるを得ないという残酷な販売戦略。
また、「で、前作の続き」「いよいよ第3話の始まりである」と、前回のあらすじが書かれていないため、
2話、3話以降から買ったプレイヤーは当然置いてけぼりになります。
「赤い相撲」に限ったワケではありませんが、ディスクステーションに収められたゲームというのは
続き物の作品も結構あったため、プレイを始める前から、
いろいろ微妙な困難が待ちうけていたりする場合もあったのです。
○後書きに代えて
コンパイルと言えば「ぷよぷよ」、そして「アレスタ」に代表されるSTGなどで名が知られていますが、
筆者から見れば、技術力と奇想天外なアイディアを併せ持った、
1くせあるゲームを制作する素晴らしいメーカーという印象が非常に強かったのです。
この後に現れた、盛場拳佑が日本刀片手に学園征服を企む生徒会をブッ倒しに行くというRPG、
「吉田(きちだ)学園戦記」に、マッチョなおっさんの身体をあちこちクリックして反応を見る「筋肉であそぼう」、
そして最後の方におまけゲームとして作られた、ジャンプヒーローというゲームのサブキャラ(?)である、
全身赤タイツの男がリンゴを求めて上へ上へとあの世まで、ひたすら上って行くアクションゲームなど、
他にもここでは語りきれない程の変ゲーを制作していたことは、知っている方にとって、
また、とても懐かしい話として涙を流さずにはいられないことでしょう・・・・・・たぶん。
そして11月に発売予定である「ザナック×ザナック」よりも、これらのゲームをリメイクして頂けたらと、
偏った筆者はこっそり願っていたりもするのでした。こっそりね。