我々にも少年のころはありました。今でこそ定職を持ち自分の稼ぎでメシを食い、
家帰って靴下脱いでもなかなか跡が消えなくなって「オレも歳かなぁ」
などと吉田栄作もビックリの哀愁ただよわせちゃったりしてますが、そう、我々にも少年時代がありました。
そして、その小さい胸に秘めた思いを熱くたぎらせる少年漫画というものがあったはずです。
サッカー漫画と言えば『キャプテン翼』、バスケ漫画と言えば『スラムダンク』
ボクシング漫画と言えば『はじめの一歩』
そして剣道漫画と言えばこれ、『六三四の剣』
「六三四の剣」とはその昔少年サンデーで連載していた日本を代表する剣道漫画で、剣道少年にとって
バイブル的存在。 かくいう私も中学高校と剣道部に所属しており部活の前は六三四VS乾戦を読んだりして
やる気を出したもの。まぁ、部活中に二刀流の使い手・乾のマネして竹刀2本持ってチャンバラやってたら
顧問に牙突を食らったんですけどね!
その時の顧問が言った言葉が 「人を斬る剣を教えてやる」
素で怖ぇよ先生!竹刀で人を斬るなんて、シルバーチャリオッツでも身につけているんですか?
ちなみにあなたから頂いた「人を斬る剣」はいま私の中で活人剣として生き続け、
毎晩マクラを叩いてフカフカにしてから寝ています。
で、そんな幼き剣道少年のトラウマにもなっている六三四の剣。もちろんこんな人気コミックは
即ゲーム化という流れが80年代の常。
ファミコン初の対戦格闘アクションもあり
というキャッチが世の剣道少年の指を熱くさせるじゃないですか!!
ただ心配なのは開発元が世に『たけしの挑戦状』を送り出したというタイトーということだけ。
まぁハードが変わってもの剣術アクションゲームのレベルも似たようなもので、
ラスボスが志村けんのバカ殿というスクウェアの株をブラックマンデーさせたブシドーブレードしかり、
侍と名のつくゲームのくせに色モノキャラばっかりのサムライスピリッツしかりといった
開発陣は全員真珠湾の時の生き残りなんじゃないかと思わせるような
日本の歴史をなんか誤解したゲームばっかりだったのですが、
特にサムライスピリッツは最近個人運営テキストサイト侍魂の方に名前を奪われかけているので
ここは一発次回作の新キャラに先行者を入れるのはどうでしょうかSNK?
いやイケると思いますよ?夕日をバックに覇王丸と向かい合う中国代表先行者。
舞台はぜひ天安門広場で。
なんだか違うゲームのレビューになりそうなんで話を戻しますが、六三四の剣ゲームレビューの前に
ちょっと原作の主要キャラ紹介などしていきましょう。
なお、原作を知らない人や剣道に興味の無い人は問答無用のロケットスタートで置いていきますのでご了承ください。
夏木 六三四 (なつき むさし):
主人公。日本最強の剣士を父に持ち、”岩手の鬼ユリ”の異名をとる女剣士を母に持つ。
6月3日の4時に生まれたから六三四、という主人公のくせに意外と安っぽいエピソードを持つ。
小学生時はジャンピング面とかおよそ武道とはかけはなれた技を使って中学生に勝ったりという
はっちゃけっぷり(反則)。高校生になってもそのはっちゃけぶりは変わらず、
暗闇で1対10で闘ったり崖の上で闘ったり(男塾?)。生涯のライバル、藤堂修羅に勝つためにやった修行が
日本全国道場破り巡業という石坂浩司の黄門様だってこんなのやんねぇ。
藤堂 修羅 (とうどう しゅら):
六三四と同じく剣道のサラブレッドで、六三四のライバル。ライバルなんだけどめっちゃいい奴で
たぶん読者の大半は六三四よりも修羅を応援していたと思う。またこの修羅の親父がすげぇ厳しくて怖いんですよ。
ダイナマ伊藤に似てるけど。
轟 嵐子 (とどろき らんこ):
とてもヒロインとは思えないような凄まじい名前。最終回になっても六三四との仲は全く進展せず、という
サラダデイズの読者にケンカを売っているかのようなヒロイン。
日高 剣介 (ひだか けんすけ)
九州最強の高校生剣士。示現流蜻蛉(トンボ)の構えから繰り出すパワー剣道は大迫力の一言で、
原作では日高が面を打つその度に大ゴマ使ってバックで桜島がドカンドカン噴火。
桜島近辺の住人にしてみればもう日高剣道やめろ状態。
また原作の漫画では作者の村上ともか先生がなにか九州人を誤解してるんじゃないかと
思わせるエピソードがこれ↓
六三四が日本全国道場破りで数々の有名道場で無類の強さを発揮し、次はいよいよ剣道大国・九州。
そんなめちゃめちゃ強いとウワサの六三四と一戦交えようと、停泊先の港では
数百人規模の剣道家が防具を付けて大集合&お出迎え。
見開き2ページまるごと使ってドーンと数百人の薩摩剣道家達。
六三四くんは剣道バカなので「薩摩魂しかと受け取った!全員やっつけてやる!」とみんなを船の上から挑発してますが、
ビートルズだったらそのままイギリスに帰ってるとこです。
こんな薩摩魂をバカにしてるかのような展開、村上ともか先生は九州出身の人に結婚サギにでもあったのでしょうか。
ネットアイドルち○はそんな村上ともか先生を応援しています。
乾 (いぬい)
おそらく剣道界初のヤクザ×天才×ストーカー。六三四の幼馴染みに惚れこむもののその女の子
には振られっぱなしで、結局六三四が悪いという逆恨みに落ちつく。一時期は六三四に腕を折られて
スランプに陥ってたものの、後に異端の二刀流使いで登場という見事な復活を果たす。
こんな目つきの悪いヤクザストーカー、「あいのり」とか出ても絶対彼女できません。
ラブワゴン乗ったら三大陸制覇どころかムー大陸まで制覇するんじゃないでしょうか。
さて、ゲームレビューに入りましょう。
このゲーム、小学校時代の六三四くんが横スクロール画面の中を修行と称して
山・空・民家の中で次々現れる敵キャラをぶっ潰し、全日本剣道選手権が行われる
日本武道館を目指して突き進むというストーリー構成。
ゲーム画面はパッと見まんまマリオだが、別に嵐子が藤堂修羅にさらわれたりもしませんし
日高を階段で踏んづけたら無限増殖ができるわけでもございません。
六三四くんの攻撃は手に持つ竹刀。上段・中段・下段の攻撃を使い分け出てくる敵を
片っ端からぶった斬ります。なお、六三四くんの攻撃は同じ背格好の相手が目の前にいたとしたら
それぞれ上段は面、中段は胴、下段は足にヒットします。
ってちょっと待て
剣道の攻撃に足なんてない。
おいおい剣道のルール知ってんのかよ! とネット裏からヤジ飛ばしてこのゲームの開発者を泣かしてやりたい気分です。
どうやらこの開発者はサッカーのルールも知らないでサッカー漫画を描いてる高橋陽一大先生
と同じタイプのようです。雷獣なんてアレだ、ネコだよ。
さて、ゲームをやってみよう。
タイトル画面でスタート押して(ポチッとな)『六三四3歳 特訓編』の文字が。
3歳?
昨日今日やっと首が座ったようなガキがいきなり修行ですか!?
お母さんはどうしたんですか!?六三四くんを置いてパチンコにでも行きましたか!?
それとも岩手県で出版されてる『ひよこクラブ』には
「3歳たるもの、一人で修行できずになんとする」とでも書いてるんでしょうか。
26にもなって風俗の入り口で考えこむという冒険ひとつできないうちの兄貴にも教えてあげたいです。
さてゲーム画面では・・・・おぉっと六三四くん、なんといきなり道着&防具をつけてのスタート。
やる気です!やる気満々です六三四くんッ! そうですよね、初期装備は大切ですもんね。
きっとアレですね、
六三四くんは彼女との初デートの日も初期装備と称して家でコンドームを装着していくんでしょうね。
そんマネするのはカメレオンの矢沢だけだと思ってましたよ!
で、修行場所であるステージは六三四くんが生まれた岩手県からスタート。
ゴールの日本武道館目指して桜前線にケンカを売りながら六三四くんは南下していきます。
さて、3歳の子供が修行と称して画面を練り歩くだけだから特に難しくもないだろう、と思ったら大間違い。
岩手はスゴイことになってます。
向こうから来るのは・・・クリボー!?ママー!変なナマモノがいるよー!
このクリボーもどき、本物クリボーといっしょでこっちに向かって歩いてくるだけの超ザコ。
というか、なんで岩手にこんな未確認生物が?X−FILEにまかせるべきです!
しかし「この世に不思議なことなどないのだよ」と言わんばかりに六三四くん、手に持つ竹刀で叩き殺す。
見事クリボーは儚く命を落とします。その塵一つ残さず消滅するという地球へのやさしさに気を良くしたのか、
六三四くんはガンガンナマモノを殺しまくります。迫り来るクリボーや竹ヤリ、イガグリ、古タイヤ、バケツ
なども叩き潰しながら一人修羅道を突き進みます。キャーカッコイー。
とそこへ落石が頭上に!六三四くんピンチ!
ボゴッ (←竹刀で岩を破壊した音)
あぁっ、今度はロケットがまっすぐこっちに!六三四くんピンチ!
ボゴッ (←竹刀でロケットを破壊した音)
お、湖で優雅にクジラが泳いでいるぞ!いやーかわい
ボゴッ (←竹刀で)
私、生身の人間でシロナガスクジラを倒せるのは範馬勇次郎だけだと思ってたんですが
どうやら岩手県の3歳児でも倒せるようです。
つーかなんで竹刀で壊せるのよ?
竹の刀と書いて竹刀よ。竹100%よ。 岩やロケットなんかを竹刀で叩き壊せるんだったら
ルパンは五右衛門を仲間に加えてません。
それとも六三四くんが持っているのは竹刀じゃなくてラグナロクなんですか?
へぇーこんな時代にタイトーとスクウェアがゲームを共同開発していたなんて
ファミ通も知らないビッグニュースですねじゃねぇよ。
しかしさすがたけしを電脳世界に送り込んだタイトー、原作の『六三四の剣』の世界観と
なんの関連性もないゲームシステムです。
画面を見れば一目瞭然。異世界の住人が画面に浮かんでは消え、犬は地中を掘り進み、
小5のこわっぱは竹刀片手に自然破壊に勤しんでいる。気分はまさにアウターゾーン。
高橋裕也被告も三田佳子邸の地下でこんな景色を見ていたに違いない。
で、アイテムの獲得方法なのですが、基本的にアイテムは障害物を叩くと出るものなので、
叩けるものはみんな叩きます。木の枝や竹はもちろん灯篭や墓石に至るまで。
墓石ですよ墓石!
アイテムよ出ろ、とばかりに他人のお墓を竹刀でボコンボコン叩きまくる我らが六三四くん(3歳)。
他人のお墓壊して出てきたお供え物のおにぎりを食べて体力回復。そして次の墓石をまたボコンボコン。
次の墓石をボコンボコン。
次の墓石をボコンボコン。
次の墓石をボコンボコン。
タイトー開発陣が水木しげるにブン殴られそうです。
標準装備でもリミッターの外れたるろうに剣心並みに強い六三四くん(3歳)ですが、
他にも六三四くんはアイテムをとったらいろいろパワーアップします。
足が速くなったりジャンプ力が増えたり、アイテムを50個揃えることでATフィールドを発生させたり。
相手は子供とばかりに敵が次々と襲いかかってきますが、アイテムで悪鬼羅刹と化した六三四くんの敵ではありません。
敵 :
「敵は子供一人だ!野郎でも、かかれぇっ!」
ズガッ
ドシュッ
グジュッ
「こ、子供のくせに・・・ぐほっ!」
「あの人は、やる時はやる人だったのか・・・・」 (J.ポルナレフ談)
そんなこんなで1面クリアー。ふぅ、次は2面かぁ。
で、画面には『六三四5歳 荒修行編』の文字が。
5歳?
2年たってもまだ武道館に着いてないのかよ!
電車で行けよと言いたくなる気持ちを押さえ、コントローラを握る私。
しかししかし、こんなツッコミはまだ序章に過ぎない。この2面をクリアーすると更に驚愕の文章が!!
『六三四7歳 道場破り編』
4年!岩手を出発して4年ですよ奥さん!!
半年あればユーラシア大陸だって横断できるこのご時世。
「いやー六三四くんはものすごい短足だったんですよ〜」とタイトー開発陣は説明したんでしょうか。
学校だって4年もサボれば「ヘルニアでした」で言い訳できるレベルではありません。
しかし3歳、5歳、7歳ときてまだ六三四くんは修行を続けているんですから、このままいったら
『六三四18歳 はじめての歌舞伎町編』
とかいってなんか違う修行を始めてしまいそうです。
竹刀の代わりに違うモノを握っていそうです。
まぁでも防具とかは大事ですからちゃんとカブっていそうですよね。 あそこに。
26歳になったらいよいよデスピサロ編です。
ちなみにこのゲーム、剣の道を極めようとする少年剣士の涙と苦難の修行風景を表したかったんでしょうが
当の本人は迫りくる敵といっしょに自然破壊、不法侵入、公共物破損を繰り返し
果ては掃除のおばちゃんや少年剣士といった人間キャラまでも
「こんな楽しい事学校じゃ教えてくれなかった」とでも言いたげな笑顔でぶっ倒し
な、なにすっだよアンタ! (バキッ)
やめてけろ!今日は子供の誕生日で (ズガッ)
お母さーん! (ボグッ ボグッ)
極悪童子、誕生。
阿鼻叫喚がこだまする血の海地獄の中、紅く染まった竹刀片手に一人佇む少年剣士M。
青い空をバックに日本最強の剣士と鬼ユリがほくそ笑んでる構図が思い浮かびます。
こんな平気な顔してロケットを竹刀ではたき落とすバケモノは軍隊呼んだくらいじゃ倒せそうにないので
とりあえずヘルシング呼んでこい
さてこんな思わずカセットを箱ごと電子レンジで温めたくなっちゃうような六三四の剣ですが、なんと
このゲームには六三四くんが無敵になれる裏技があったのです!!
またその裏技の方法がまんまバカ。ファミ通だったらガバスの代わりに由美かおるのトレカが送られてきそうです。
それではその裏技である無敵になる方法をご説明しましょう。
1.「六三四の剣」のカセットをファミコンに入れ、電源を入れる
2.タイトル画面が表示されたのを確認する
3.カセットをガッと掴む
3.勢いよくカセットをガタガタ揺らす(勿論本体にカセットは入れたまま)
4.ほどよく、揺らす(ガタガタ)
5.するとどうでしょう、六三四くんは普通に歩いてるのに画面はバグってるじゃありませんか!
6.そしてリセットボタンを押して、普通にゲームスタート。すると六三四くんが無敵になります
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かつてこんな物理的接触を与える事により無敵になれるというゲームなどあったでしょうか?
ファミリートレーナー以来の身体を使ったアクションゲームです。さぁ、Let’sガタガタ!
なおこの裏技をカセットを買ってくれた親の前でやると見事なアッパーカットを食らいます。
事実私はしばらくゲーム禁止になりました。「物を大切にしない子になった」ってお母さん、泣かないで!
そりゃ自分の息子が部屋で一人トチ狂った目でファミコンソフトをガタガタ揺らしてたら、
お母さんの手も自然とタウンページで病院の項目を探そうというもの。
ゲームの話に戻しましょう。
そんなこんなでやってきました最終目的地、日本武道館。
いやここまで進むのって難しいんですよ。ホント前述で説明した無敵ワザでも
使用しない限り天竺と同じくらい到達不可能なんじゃないですかね。
ここで1VS1の対戦方式にゲームシステムがスイッチ。中古で買って説明書持ってない人は
この変化についていけるのでしょうか。
えー、試合は計四回戦。大石−乾−日高−修羅とつづくのですがこのレビューも
長くなり過ぎだしさっきビデオに録ったタモリ倶楽部を見たいので舞台は一気に決勝戦へ。
いよいよ決勝戦。相手はもちろん永遠のライバル・藤堂修羅。
それにしてもファミコン特有のドット絵のせいなのか、原作でもさわやか少年だった
修羅くんがとってもプリチー&茶坊主。
チェリオ買ってこいと言ったらダッシュで買ってきてくれそうです。そんな彼に
「やさしく面を打ってあげよう」とばかりにアタックしかけると、牙突をかましてきます(中段突き)。
他のキャラなんてえいやーっとばかりにショボイ突きしかしてこないんですが、この修羅くん、かわいい顔して
悪・即・斬! (ズシュッ)
しかもノーモーションの零式だったり。
振り向き様に「阿呆が!」(それは言いません)
この強さ、さすがラスボスです。ゾーマなんざメじゃないです。
どこぞのババァに鼻息一つで倒された『薔薇門の家族』のラスボスも見習って欲しいです。
そしてこの修羅くんと熱戦を繰り広げる我らが主人公、六三四くん。
ファミコンという8ビット機種のくせにキャラ動きが早いので、ちょっとここでキレのある野球解説でお馴染み
元阪神・ミスタータイガースの掛布さんに解説をお願いいたしましょう。
うーん、六三四くんは振り抜きが非常にクイック&スピーディですねぇ。
オマエのその残り少ない頭皮も青龍刀で振り抜いちゃうよ?と
いう衝動にかられながらもこの藤堂修羅に勝つと、やっとエンディング・・・・かと思いきや
青い画面に『六三四3歳 特訓編』の文字とともにもう1周。
ホワッツ!? (゚Д゚ )
しかも敵の動きが早いですよ!ザコのナマモノでさえビュンビュン六三四くんに向かって突っ込んできます。
その難しさに思わず持ってたコントローラーも開発者の口に突っ込ませたくなります。
そして2回目の修羅くん(更に強くなってやがる)を倒すとやっとエンディング。
スタッフロールのあとは高校生になった六三四と嵐子のツーショット画像でサヨウナラ。
私は無敵技でここまで余裕できたんですが、ちゃんと普通にやってクリアーできた人はいるんでしょうか?
とりあえずレビューをまとめますと、このゲームをやっての私の感想は
『ムサシ・ナツキがあと10人いたらアメリカは日本に負けていた』
ということです。