頭脳戦艦ガル

(機種:FC / メーカー:デービーソフト)

 


[キテレツRPG大百科]

 

 本作、まずカートリッジにデカデカとスクロール・ロールプレイングと書かれてあるので、ジャンルはRPGだという事が伺えます。しかし描かれてあるイラストはというと、剣を持った勇者とかいうのではなく戦闘機。そしてスタートさせてみると、画面にはその戦闘機の姿が。十字ボタンで操作、敵の攻撃を避けつつ、Aボタンを押して弾を発射し敵をやっつけます。

 

普通これはシューティングといいますね。

なぜ本作はSTGなのにも関わらず、RPGだと言い張ってるのでしょうか?

 

 RPG。ドラクエのヒットにより、すっかり定着してしまったジャンルであります。もともとどこかのゲームがヒットしたら、なりふりかまわず2匹目のドジョウを漁りまくるこの業界。当然ながら各社こぞってRPGを製作するようになりました。

 その中にはもちろんファイナルファンタジーのように、ドラクエに追いつけ追い越せと精魂込めて作られたものもあるのですが、なにぶんRPGという言葉そのものが大きなセールスポイントとなっていた時代。ただの思いつきで作られたもの。適当なキャラクターの版権を手に入れて、ドラクエもどきなRPGのシステムに乗っけたもの。それまでアクションゲームだったシリーズの最新作がいきなりRPGになったり、またはその要素を合成されたというものなどなど。とにかく形だけでもRPGならそれでいいという考えが少なからず浸透していたのです(もちろん面白くて結果オーライなものもありましたが)。

 ではこの「頭脳戦艦ガル」もそうしたゲームの1つだったのでしょうか?とにかくRPGが売れるからと、ウソでもいいからRPGと言い張って売り出した。なるほど。そう考えれば確かに納得はいきます。すごい度胸ではありますが。

 

 しかしその仮説はすぐに否定される事となります。まあ調べればすぐにわかるのですが、実は本作の発売日はなんとドラクエよりも先、

 

つまりRPGという言葉が日本に浸透する前だったのです。

 

 さらに言えばゼルダの伝説やハイドライドスペシャルよりも前。その当時ファミコンでRPG要素を含んだゲームといえばドルアーガの塔やボコスカウォーズくらいのものでした。

 もし本作が単にブームに便乗するためだけの理由でRPGという言葉を使ったゲームならば、ドラクエ以前の時代に存在するなどありえません。なぜそんな時代に存在していたのでしょうか?

 という訳で今日はこの奇妙なオーパーツの謎を解き明かしていく事にしましょう。


[ロールプレイングとわ]

 

 そもそもRPGとは何なのでしょうか?「主人公が成長していくゲーム?」確かに間違っていません。と言うかむしろそれが常識となっています。

 しかし、言葉の意味では「役を演じるゲーム」となる訳でして、その役になりきって遊ぶ、早い話が「ごっこ遊び」なんですね。要するに内容はSTGでもプレイヤーが戦闘機のパイロットになりきってるならそれはRPGになるし、逆に最近のRPGによく見られる「プレイヤーは第三者の視点となって物語を観賞する」というのは、RPGとは言えないって事になるのです。例えばFF7のCMの中で

「もう、クラウドにはなったかい?」

なんてセリフがありましたが、正直言って独自の意思を持って勝手にベラベラしゃべる主人公をイコール自分ととらえる人はあまりいないと思いますし、まして8に至っては、リノアが嫌いな人がスコール=自分になんて置き換えられるわけがありません。

  もっともこれはあくまで言葉の意味での話なので、今更「今のRPGはRPGじゃない!」などと言っても仕方ありません。今日におけるRPGの定義というのはやはり前述の

「キャラクターが成長する要素のあるゲーム」

と言い切ってしまってもまず間違いないでしょう。

 

 では成長という要素はいつ、どこから出てきたのでしょうか?まずはこれをご覧下さい。

 

「最初にRPGがプレイされたのは、多分アメリカの「ダンジョンズ&ドラゴンズ」あたりだろうと思う。これはファンタジー小説の名作「指輪物語」の世界に憧れた人達が、自分が勇者になったつもりで、ダンジョンを冒険していく冒険ゴッコゲームとして作り上げたものだ。」

 

これは手持ちの資料「ファミコン神拳奥義大全書特別編」(集英書房刊社)から抜粋したものですが、この当時の、いわゆるテーブルトークRPGからすでに「経験値を獲得して主人公が成長する」という要素が取り入れられていたようです。何故取り入れられたのかまではわかりませんが、自分と主人公とをより重ね合わせるための手段の1つとして考えられたのかもしれません。

 そしてこの「仕様の1つ」にすぎない成長という要素が何故、今日におけるRPGの定義にまでなったのかは案外、「元祖がそうだったからそれに習った。」という割と単純なものなのかもしれません。

 

.このD&DなどのTRPGに影響を受け、コンピューターを導入する事によって1人でもプレイできるRPGとしてウルティマやウィザードリィを作った。

 

.ウルティマやウィザードリィの影響を受け、日本のファミコンユーザーでも楽しめるRPGをと(パソコンでは当時でもそれなりに普及していたようですが)、ドラゴンクエストを作った。

 

.ドラクエの影響を受け、そのブームに便乗するためにとにかくRPGを作った。

 

といった具合で。特に便乗のための模倣でRPGとはどんなものかを調べた場合、表面上のシステムの「成長」に目がいき、そこに結論付けられるのは流れとしては自然かと思います。

 そしてFFのヒットにより「第三者の視点となって物語を観賞する」新たなタイプのRPGが一般的になっていくにつれ、次第に「役になりきる」という要素が置き去りにされていった・・・というのが筆者の見解です。

 ちなみにFF1は「役になりきる」要素を持ったRPGでした。


[快速?縦スクロールRPG] 

 

 では、改めて本作がどんなゲームかを見てみることにしましょう。さすがにそう簡単に進めるようなゲームではないので、まずは最後まで見てみようと無敵技を使ってプレイしてみました。

 やたら甲高く単調なBGMをバックに、洞窟のような所を進んでいきます。しばらくするとなんかよくわからないアイテムを手に入れました。 

 本作の進行は、アイテムを100個集めるまで全30のエリア(面構成は3種類)ひたすらループして回るというものです(一応10個分のボーナスアイテムもあるけど)。100個集めるとエリア30のラストに要塞のような敵が出現し、その中枢部を破壊すればエンディングです。

 で、このエリア30ってのがミソでして、もしこの時点でアイテムがギリギリ足りなかったり、要塞を破壊しそこなった場合は無駄にもう一周というあんまりな展開・・・というか実際そうなってしまいまして、結局1時間40分強、このゲームと眠気につきあうはめになりました。

 それで結局のところ何がRPG的なのかというと・・・うーん。強いて言えば自機がパワーアップするという所ですかね?進めていくとどんどんと自機の形が変わっていき、連射が付いたり、Bボタンで斜めに弾が撃てるようになってくるのですが、この成長システムがRPG的だとでも言いたかったのでしょうか?

それでSTGがRPGになるなら、ほとんどのSTGはRPGになるって。

特にダライアスなんてパワーアップにかなり時間がかかる分、より「成長」というイメージが強いです。

 

 世間で言われている本作のクソな評価。それは間違っていません。本作が面白いかと聞かれたら、ハッキリ言ってイエスとは言いがたいです。 

 しかし、それと同時に本作に対するある考えが浮かんできた事もまた事実でした・・・。


[私の事、愛してる?] 

 

 そんな中、本作に関するとある書物(マニュアルともいう)の入手に成功しました。そして様々な謎や疑問が解き明かされて行く事となったのです。正直言って当初の認識を改めざるを得ませんでした。

 

 まず疑問に思っている方も多いと思われ、「ラスボスの事?」という説もあったりした「頭脳戦艦ガル」ですが、これは自機を搭載している戦艦という事が判明しました。ただ、自機が発進するシーンとかは無いため、タイトルにもなってる割に存在感ゼロなのが酷です。ちなみに自機の名前は「ジスタスー21」

 そしてラスボスは「宇宙空間制御装置ドラッグ」。宇宙空間を制御するというところ、なんだかよくわからない凄みが伝わってきますが、早い話、敵軍の最終兵器と言ってよいでしょう。
 で、これを破壊するためにパーツを100個集めないといけない訳ですが、そもそもこれが何のパーツなのかという説明はありませんでした。

 

 そしてマニュアルを読んで1番驚いたのが自機のパワーアップの方法でした。筆者は当初、例のパーツがパワーアップのアイテムも兼ねているのかと思っていたのですが、実は敵を破壊する事によりパワーアップするのだと判明したのです。本作におけるパーツの取得は世間一般のRPGで言う所の「イベントをクリアしてフラグを立てる」行為と同じと見てよいでしょう。さらには

「スコアを上げて、プレイヤー機のパワーアップを目指して下さい。」

とも書かれてる上、高得点を取る為の必勝法が事細かく紹介されてるところからして、どうやらスコアによってパワーアップしていくという事がうかがえます。先のエリアへ進んだり、また周を重ねる事により敵の攻撃はどんどん激しくなってくるため、それに対抗するためにスコアを稼いでパワーアップする・・・。

 

 ん?ここであるゲームが頭に浮かびました。攻撃が激しくなってくる先の面に備えて積極的にスコアを稼いでパワーアップ・・・。激しい攻撃に備えてスコア稼ぎ・・・。
 これってある名作STGの仕様に似てると思いませんか?おそらくそのゲームを知る人は、この頭脳戦艦ガルと一緒にされるのを嫌がるに違いありませんが、でも、似ているのです。

・・・もうお気付きになられたでしょうか?そう。そのゲームは

 

レイディアントシルバーガン

 

 え?という事は、まさか本作ってシルバーガンの原型?

 

と言うかシルバーガンもRPGですか?

 

 まあシルバーガンはともかく、本作は経験値によってレベルアップするというシステムを取り入れたファミコン初のゲームだと考えていいみたいです。なるほど。そう考えたらRPGというのもあながち的外れとも言えないかもしれません。

※ちなみにボコスカウォーズも同様に敵を倒していってパワーアップしていくシステムですが、両者の発売日は実は同じだったりします。

 ついでに言えば、STGにしてはやたら長いプレイ時間も、ゼビウスやスターフォースなどといった当時のSTGはゲームオーバーにならない限りずっと続けられるという事を考えれば、さほど異常とも思えません。


[我々は考え直すべきです。あなた方にも解っているはずだ。]  

 

 そしてこのマニュアルを読むにつれ、前述のふつふつと起こってきた考えがより真実味を帯びていくようになってきました。あろうことか

「実はこのゲーム、かなり真面目に作られたのでは?」

と感じるようになってきたのです。なにしろ先ほど触れたスコア稼ぎを意識してプレイしてみると意外なほど楽しめたから。マニュアルが無くて、この事を知らずにプレイしたのならば、おそらくこの楽しみは感じないでしょう。

 

 このように、ゲーム中に必要な説明が入れられてなかった結果、「何をしていいのかがわからない」と、低い評価を受けてしまったゲームは他にもあります。

 例えば「ワルキューレの冒険」。一応説明しますとこれはゼルダのようなアクションRPGで、謎解きもあるのですが、なにしろ会話という概念がないため、全てノーヒントで解かなければならないのです。とりあえずマニュアルを読めばゲームを始めて何をしていけばいいのかはわかるのですが、攻略本とかがないと少なくとも自分にはクリアは無理だったでしょうね。クジラが山の中にいるし。

 他にそういうゲームは「バンゲリングベイ」も挙げられるでしょうが、もっともこれらは、必要な説明を「入れなかった」のではなく「入らなかった」訳であり、そういう意味でもこれらの作品は「早すぎた」と言えるでしょう。 

 

 そしてこの早すぎたというところで、またもやふと感じてしまいました。

「実はこのゲーム、本当にRPGとして作られたのでは?」

 

 いくらRPGが面白いといっても、当時はファミコンではRPGは無かったわけで、その全く未知のジャンルが市場に受け入れられるかというのは大きな賭けでした。

 

 そのため堀井雄二氏は、RPGを知らない日本のファミコンユーザーにも理解できるようにとシステムを極限まで簡略化しました。
(もちろんその他に、日本人に馴染みやすいストーリーにしたという事などもありますが)

  一方でこのガルの製作者は、RPGが浸透していない日本のファミコンユーザーのために、すでに浸透しているSTGのシステムをベースにしたと考えられるのです。

 

 もちろんこれには当時のファミコンのロムの容量も絡んでくるでしょう。ドラクエにしても、漢字はもちろん、カタカナですら全部の文字は入れられなかった位ですので、どのみちシンプルにせざるを得なかったのです。となるとドラクエよりもさらに半年も前のものであるガルは、ドラクエでギリギリできた事すらできなかった可能性が大きく、なおさらRPGらしいRPGは作れなかった訳ですね(そんな時期にそうまでしてRPGを作る必然性があったのかは疑問ですが)。まあ両者の容量を実際に比べたわけではないので、的外れなのかもしれませんが。

 

 ドラゴンクエストと頭脳戦艦ガル。どちらが正しかったかは歴史が証明しているので、改めていう事ではないでしょう。ただ、あくまでも仮説にすぎないとはいえ、この日本にRPGというものを伝えようとしたもう1人の英雄がいたのではという事を、心の片隅にでもしまっておこうと、そう思わずにはおれませんでした・・・。

 あと、100万点取った画面写真と応募券を送るともらえるガル勲章を本当にもらった人がどれだけいるのかも気になったり。


[すいません。考え直すのはボクでした。] 

 

 が、ここで綺麗にまとめられると思った矢先、新たに古代の書物(徳間書店発行の攻略本)が手に入ってしまい、それまでの認識がまたも覆される事となってしまったのです。そこにはこう書かれていました。

 

敵を200倒すごとに、3種類5段階までパワーアップしていくぞ!!

 

え?スコアじゃなくて数!?

 

 じゃ、じゃああれだけマニュアルでもやたら強調してた敵のスコアは、パワーアップには全く影響しないって事?

 

あのシルバーガンのくだりは、まるっきり筆者の過大評価だったという事ですか?

 わーいシルバーガン面目躍如。

 

  さらに隠れキャラについても衝撃の事実が。

100万点ボーナスのキャラがいます。しかも序盤に。

スターフォースで言うと、最初のラリオスの代わりにゴーデスが出てくるようなものです。

出現させるための条件で残機をゼロにするというリスクはあるものの、後は特定の場所を撃つだけという簡単なもの。

 そしてこの本にも何故か応募券は付いています。

つまりこの本さえあれば誰でもガル勲章がもらえるのです。

・・・どうよ・・・。

 

 さらにさらにこんな警告も書かれていました。

コアで何かが起こると、ガルの頭脳が壊れてしまう!

そう、この無敵を誇るガルにも大きな弱点があったのだ。

ガルの頭脳が壊れると、そこでゲームはSTOP!最初からスタートしなければならない。

この”かくれアクシデント”に、キミが陥らないように祈る!!

 

それ、ただのバグでは?

こっちの頭脳が壊れそうです。
おか〜さ〜ん
おか・おか・おか〜さ〜ん・・・

 

 ・・・やられました。せっかく色々誉めたのに・・・

一応、RPGだという説はかろうじて残ってはいるのですが、なんかそれも吹っ飛んでしまいそうです・・・。

 

あと、チームリーダーのBOSS.OHMORI(顔写真掲載)って何者?

 

 余談ですが、例のパーツには「ドラッグ」のエネルギーの一部が収めてあるそうですが、今更どうでもいいです。

 

 このレビューで、僕はこのゲームについて皆さんに一体何を訴えたかったのでしょうか?

自分でもわからない。


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